ドクタージャーナル20号
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15DoctorsJournal検査)があります。これらのテストは、認知症の本人を検査するものです。しかし喜んで認知症の検査を受ける人はいません。多くの場合本人は嫌がります。初期の場合など尚更で、検査を受けてもらうまでに大変な苦労があります。私は、認知症の診断の前段階で、まず認知症の疑いが診断できれば良いと思いました。しかし、そのようなテストやスクリーニングはありませんでした。専門医の多くは診断基準に注力して、誰もこのことに取り組んではいませんでした。そこで私は、「認知症らしさ」を見つけるために、本人だけでなく、医師や介護者の誰にも行えるテストの開発を行いました。認知症の患者さんには、振り向き兆候とか、取り繕いとかの特徴があります。それらは全て認知症の診察の必要性の目安として用いることができます。多くの認知症臨床医のデータも参考にして、それらを実践的なテクニックとしてまとめました。キツネ・ハト模倣テストをはじめ数多くの認知症テストを公開し、誰もが使えるようにしています。標準高次動作性検査のハト模倣テストは、今は亡き愛媛大学の田邉敬貴教授が提唱され認知症への臨床応用もされていましたが、残念なことにプロトコルが残されませんでした。標準的な検査方法や診断意義が論文として明確になっていなかったために、現場ではまちまちな方法でキツネ・ハトの模倣テストが行われていました。例えば、「ハトの形を作ってください」と口頭指示を出してしまうと、全く別なテストになってしまうのです。「良く見て同じ形を作って下さい」とだけ言うのです。このように、テストの診断意義を理解した上で、標準的な検査手順に沿った検査が行われなければ、テストの意味がありません。そこで私はプロトコルを作り、その診断意義について論文として発表し、多くの医師に使ってもらえるように公開しました。その結果、キツネ・ハト模倣テストが臨床の現場で安心して使ってもらえるようになりました。現在私のホームページ上では、キツネ・ハト模倣テストをはじめ7つの認知テストや評価表を一般に公開し、誰もがダウンロードして使ってもらえるようにしています。今までの研究成果は社会に還元するのが私の責務だと思っているからです。認知テスト無料ダウンロード山口晴保研究室http://orahoo.com/yamaguchi-h/●認知症病型分類質問票43項目版(DDQ-43)解説付き2枚組●山口符号テスト(山口漢字符号変換テスト)YKSST高齢者用解説付き●認知症初期症状11項目質問紙SED-11Q本人用・介護者用・解説の3枚組●表情作成課題の型紙●落とし穴課題図●山口符号テスト(山口漢字符号置換テスト)若年者用●山口キツネ・ハト模倣テストのプロトコル(手技)これからは長寿の意味を考える必要がある長寿ゆえに増える認知症。長寿と認知症はセットになっている。予防をすれば認知症は減らせると思っている人たちがいます。残念ながら現時点では、一部の認知症を除いて認知症を完全に予防することはできません。極論しますと確実な認知症予防とは長生きをしないことです。発症する前に寿命を終えるということです。予防で発症リスクを減らすことはできます。例えばエクササイズなどは同時に健康効果もありますから寿命が延びます。ところが、認知症は高齢化と共に発症リスクが高まります。80歳で5年長生きすると発症率が20%から40%と倍増します。95歳以上では80%というデータがあります。つまり、長寿と認知症はセットになっているのです。予防で5年長生きすると、同じ年齢での有病率は減りますが、5年先で認知症になりますから、国全体での総数では減らないのです。認知症の予防とは発症の先送りであって、長生きをすることで、いずれは認知症になるのです。長く生かすという医療はいまだに多い。フランスなど欧米では認知症終末期の胃ろうは虐待だと捉えられます。私はこの考え方に賛同します。しかし日本では、一日でも長く■認知症の最前線で活躍するドクター

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