Doctors Journal 18号
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11DoctorsJournal医師体験とは、医師の臨床現場を見学させてもらう体験学習のことです。私どもが生徒の医師体験を始めたのは13年前からです。何故医学部予備校が生徒に医師体験の場を作るのかというと、将来なるべきであろう医師の仕事を実際に知ることが、実は受験生にとって非常に重要だと考えたからです。親が医師であれば、親の姿から多少なりとも医師の仕事は知っているでしょう。尊敬する親の姿が、自分が目指す医師像となっている生徒もいます。また、身内ゆえに親のいろいろな姿を見ていて、様々な思いを持っている生徒もいます。それでも一人のドクターしか知らないわけです。医師体験で親以外の医師の仕事を見ることが、あらためて医師の親を尊敬できたり、その仕事を理解できたりする機会となります。また、親が医療関係者でない生徒の中には、医師に対して漫画やドラマから誤った認識を持っている人もいます。良い部分だけでなく現場の現実の部分も知って欲しい。本当の医療現場の姿を知って欲しいという思いもあって、業界に先駆けて、予備校のカリキュラムに医師体験の授業を取り入れました。長尾 最初にクリニックの事務方から医師体験の要請があった時に、私は是非とも協力したいと思いました。実際に在宅診療に生徒さんたちを連れて行くと、患者さんやご家族が非常に好意的に受け入れてくれます。藤田 最初の頃は地域医療を経験する目的で病院に医師体験を依頼していましたが、今は在宅医療の現場を体験させて頂いています。実はほとんどの生徒が在宅医療を知りません。生徒の中には医師の父親が往診に出掛けるのは知っていても、それも在宅医療の一つとはわかっていない人もいます。ましては、在宅医が実際に患者さん宅でどのような診療をしているのかも知りません。ですから直に患者さんと接し、在宅医療の現場を経験することは、これから医師を目指す人たちにとって非常に有意義なことだと思っています。長尾 生徒さん達も初めての経験で戸惑いもあるのでしょうが、皆さん真面目に取り組んでくれます。患者さんと普通に和んでいる姿に驚かされます。中には、「是非、良いお医者さんになってくださいね。」と激励されている人もいます。■在宅医療の最前線で活躍するドクター1.多職種間で患者についての情報交換や話し合う機会が不足していること。2.病棟医師と在宅医、看護師同士などとの情報共有や交流が不十分なこと。3.多忙な医師とは連絡がとりづらくて、気を遣うことも多く、連携が難しいことがある。4.医療側の生活への理解不足や、介護側の医療に関する知識不足のため、お互いの理解や連携が不十分であること。5.在宅療養は異なる機関に所属する多職種が関わるために、治療ケアの方針決定プロセスが不明確なこともある。 1.医療機関や事業所の特徴や空き状況など、地域資源についての情報の把握が難しい。 2.情報が分散していたり共通のアプローチ方法がない等の理由で、多職種間での情報共有が不十分である。1.他職種・他機関との連携が必要であるため、書類作成や連絡、日程調整等に多大な労力を要する 2.在宅療養は医療面と介護面の両面への介入が必要となるが、それらの諸制度が煩雑で分かりにくい 3.疾病や生活障害、制度活用等について従事者が相談できるところが不足している。4.医療保険との兼ね合いや限度額の存在等から、在宅療養を支えるには現状の介護保険では不十分である 。病院の医療従事者が、在宅医療でできることを十分に把握していないため、在宅へのスムーズな移行ができないことがある。入院早期からの退院調整や退院前カンファレンスの開催等が不十分なことがある。在宅の終末期における、抗がん剤や胃瘻造設の適応等についての考え方が、医療者間で統一されていないことがある。多職種間での役割分担が不明確で、自分以外の職種の専門性やその職務の限界を、お互いが理解していないことがある。医療連携の基盤となる、お互いに顔の見える良好な信頼関係がつくれていないことがある。在宅医療に従事する専門職が不足している。患者の急病に際して、緊急入院の受け入れ先の確保にしばしば苦慮する。入院、入所、レスパイト先などの在宅を補完する病院や施設が不足している 。家族の患者を支える介護力が不足していたり、家族の協力が得られにくいことがある。経済的問題を伴っている在宅療養の対象者も多く、その対応に苦慮することがある。独居や認知症の高齢者が増え、疾病や介護以外の対応に苦慮することがある。医療や介護のサービス内容や意義などが十分に理解されていないために、その導入や継続が難しいことがある。看取りやがん・難病など医療ニーズの高い患者が増えているが、その受け入れ体制が不十分。主な課題連携における難しさ病院から在宅への移行における難しさ退院調整における難しさ臨床倫理における難しさ相互理解の難しさ良好な関係作りの難しさマンパワー不足緊急入院先の不足在宅を補完する病院や施設の不足介護力不足経済的問題世帯の抱える問題の難しさ医療依存度の高い患者の増加情報の共有の難しさ制度に関わる課題サービス利用への障壁具体的な内容在宅医療の課題

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