ドクタージャーナルVol.16
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9DoctorsJournal最近は認知症をテーマとした映画も作られています。2008年に上映された渡辺謙主演の若年認知症をテーマにした「明日の記憶」は大きな反響を呼びました。そして若年認知症と気づいたら、本人や家族にとっては認め難い現実かもしれませんが速やかな専門医の受診が大切です。ただ本人が自分でおかしいと気付く事は難しいため、家族や会社の同僚、仲の良い友達などがおかしいと気付き、受診を勧めるケースが多いのも特徴です。若年認知症を取り巻く世の中の現状厚生労働省が2015年に発表した認知症施策推進総合戦略「新オレンジプラン」における若年認知症対応のメニューは決して十分とは言えませんが、その中で若年性認知症施策の強化として、都道府県ごとに若年性認知症の人やその家族からの相談の窓口を設置し、そこに若年性認知症の人の自立支援に関わる関係者のネットワークの調整役を担う者を配置することで、若年性認知症の人の視点に立った対策を進めることが盛り込まれたことは評価できると思っています。認知症は介護保険で対応できますが、私としては、若年認知症の人は障害者と考えたほうがよく、障害者総合支援法を中心とした対応がより現実に即していると考えます。しかし残念ながら医療行政の関係者にその自覚が不足しています。特に前頭側頭型認知症、いわゆるピック病に対しては、医療も介護も十分な対応ができていません。前頭側頭型認知症(ピック病)になると、性格や行動に異変が生じます。怒りっぽくなる、約束を破る、不潔になる、相手を無視する、暴力に訴えるなどの性格や行動の変化が大きいのが特徴です。時には万引きや無銭飲食などの非常識な振る舞いもします。本人の病識はありません。実際は病気が原因にもかかわらず、そのために逮捕されたり職場を解雇されたりということも起きています。―日本認知症ワーキンググループ共同代表の中村成信さんの著書「ぼくが前を向いて歩く理由―事件、ピック病を超えて、いまを生きる」でも、まさにその体験がつづられていますね行政の若年認知症に対する無理解や無知もあります。ピック病での逮捕の例もそうですが、若年認知症で最も必要な社会福祉制度の利用でもいろいろと制限が掛かっていて使いづらいのが現状です。役所の窓口である患者さんがアルツハイマー病と書いて申請したら認知症と書いてないから認められない。と言われたと聞いて驚きました。そのままであれば泣き寝入りです。そのように患者さんが不利益を被っている例はたくさんあるのではないでしょうか。―若年認知症の人たちは、特有の多くの困難を抱えて生きていると思われます。若年認知症ゆえの困難とはどのようなことでしょうか当事者が抱える困難と苦労65歳未満で発症するのが若年認知症です。つまりまだ労働年齢の方々で、なおかつ男性が多いということは、働き盛りであったり子育て中であったりするわけですから、職を失うことによる家族を巻き込む経済面での問題が非常に大きい。まだ日本では会社の理解や世の中の理解が追いついていないので、若年認知症の人が働き続けることは難しいのが現状です。多くの人が復職のない病気休暇や■若年認知症の最大の問題とは:宮永和夫氏 医学博士

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