ドクタージャーナルVol.16
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8DoctorsJournalは今後アルツハイマー病の人が爆発的に増えていくのではないかと思っています。また、脳血管障害で起こった認知症は、認知症に入れるべきか、という議論もあります。アルツハイマー病やレビー小体病、ピック病などは脳にある種のタンパクなどが溜まって引き起こされるもので、脳血管性とは原因が根本的に違います。脳血管性認知症と高次脳機能障害との境界もはっきりしていません。ですから認知症を高次脳機能障害として診ていたり、高次脳機能障害を認知症として診ていたりと、非常に曖昧な立ち位置にあります。しかも、脳血管性は認知症といいながらも回復する可能性もあるのです。認知症自体は症状を指します。しかし認知症の人となると病気でもあり、障害でもあるといえます。どの視点で捉えるかで違ってきますが、全体としては曖昧なままで使われていると思います。老年期認知症の場合は病気という捉え方が現実的かもしれませんが、若年認知症の人にとっては障害と考えたほうが良いと考えています。―若年性認知症の8割が失職厚労省研究班―厚生労働省研究班の生活実態調査で、65歳未満で発症した若年性認知症の人で就労経験がある約1400人のうち約8割が勤務先を自ら退職したり、解雇されたりしたと回答したことが分かりました。これは認知症介護研究・研修大府センターが平成26年夏から年末にかけて実施した調査結果で、秋田、岐阜、大阪など15府県の医療機関などの、18~64歳の若年認知症患者2129人についての回答です。就労経験があると確認できた1411人のうち、定年前に自ら退職した人は996人、解雇された人が119人で、合わせて79%に上った。定年退職したのは135人でした。労働時間の短縮や配置転換など、仕事を続けるための配慮が十分とはいえず、若年性認知症の対応については企業側の意識改革も求められています。初期の段階では記憶障害や見当識障害などが見られますが、身体合併症が少なく元気で体力もあるので老年期認知症に比べると介護が大変だという問題もあります。しかも発症後からの介護の期間はおのずと長期化します。初期の診断で精神疾患と誤診されることが多いのも特徴の一つです。若年認知症に対する医師の知識や経験不足から、年齢的に認知症と考えづらく、うつ病と誤診されることが多いのです。意欲低下や性格変化がうつ病と似ているからです。早期発見と早期治療が肝心です何といっても早期発見と早期治療が肝心です。若年認知症は高齢者の認知症よりも進行が早いと言われています。また早期発見し治療を行う事で、症状の進行を遅くするなどが期待出来ますので、早期に受診する必要があります。そのために若年認知症に対する社会の認識や知識の普及が最も大切です。それが早期発見につながります。職場におけるメンタルヘルスの中にも、若年認知症の知識を普及することで個人の病識が高まり、周囲も早く気付くようになるでしょう。職場の産業医の役割も大きい。地域のかかりつけ医も同様です。もっともこれは認知症全般について言えることですが、十分な理解や知識を有している医師がまだまだ少ないと感じています。マスコミ報道や地域での講演会などを通じて世間の人にも広く認知させていくことも大切だと思います。

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