ドクタージャーナルVol.16
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13DoctorsJournalここで重要なことは、本人の希望を聞くこと、本人の希望を推し量ること、本人の希望を叶える努力をするように努めることです。私は、こちらもこれだけ努力するから、ご本人や家族もこれだけ頑張ってほしいと率直に言います。相手も理解・納得してくれます。これは若年認知症の人だから可能なのです。若年認知症の治療とは、医療側と本人・家族の役割分担による共同戦線で共に前進してゆくようなものです。―宮永先生は、多くの若年認知症家族会の立ち上げに関わってこられていますが―若年認知症家族会は癒しの場でもあると同時に、家族同士だからこそ医師には言えない話もできるし、理解もできることがあるようです。最初の頃は家族だけだと思っていたのですが当事者も参加するのに驚きました。更には、当事者が亡くなられた後も家族会に参加している会員もいますし、お葬式にまで参列される方々もいます。私もお葬式に出たことがありますが、若年認知症家族会の会員たちは思っていた以上に深い繋がりができているような気がします。それまでの多くの認知症家族会は主に老人が対象でしたので、どうしてもそぐわない。若年認知症家族会は意図して集めたわけではなく、集まらざるを得なかったという理由で生まれました。小さい単位まで数えれば全国各地でたくさんの家族会が活動しています。朱雀の会若年認知症家族会の発足理由と役割若年認知症の理解を深めるとともに、患者本人と家族への援助を行うこと、また、若年認知症の専門的な治療と介護の向上及び福祉の充実を図るための活動を行うことを目的としています。平成9年に奈良県において「初老期痴呆家族会」として活動を開始したのが若年認知症家族会の始まりです。しかしその後活動を続けることが難しい状況になって、当時厚生労働省厚生科学研究若年痴呆研究班の主任研究者だった私と多くの支援者が支援して、平成13年4月に新たに「朱雀の会若年認知症家族会」を発足しました。会の名称は、当時事務局の所在地があった奈良市の朱雀から名づけられています。この家族会の特徴は、家族だけでなく、本人と支援者も含めた3者による組織という点です。特に当事者の本人が参加することになったのは、若年認知症家族会の特徴といえます。大きな理由としては、当時の家族会の集会時に若年認知症の人を一時的に預かってくれる施設などが無かったことと、夫婦が治療に一心同■若年認知症の最大の問題とは:宮永和夫氏 医学博士

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