ドクタージャーナルVol.16
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12DoctorsJournalも原因に目を向けずに薬で抑えようとする医師も多い。―医療側から見た若年認知症治療の課題とは何でしょうか―特に若年認知症では介護保険制度が使いづらく、生活支援の手段が少ない点です。40歳以上であれば、「老化に伴って発症した」認知症は介護保険の給付対象になりますが、交通事故などによる頭部外傷による後遺症や、アルコール脳症などからなる認知症は「老化に伴っていない」ため適用外となってしまいます。介護保険制度は、基本的には高齢者の方に必要な介護サービスを提供する制度であることから、若年認知症の人に対しては、入所・通所施設での対応が難しい場合もあります。現状では、障害者向けの施設で若年認知症の人を受け入れているケースも少ないです。障害者総合支援法による障害福祉サービで対応することもあります。しかし申請に制限があったりして必ずしも使い勝手の良い十分な制度とは言えません。医師の社会保障制度の理解不足で利用推進が十分に行われていないという課題もあります。特に若年認知症では経済的生活支援は非常に重要ですから、これも医師の重要な役割といえるのではないでしょうか。医師によって傷つけられている人たちまた、誤解を恐れずに言えば、今の認知症診療の現場では最初にどの医師と出会い、どのような診断を下されるかでその人の人生が大きく変わってしまう。認知症をあまり解っていない医師によって認知症の診療が行われていることが多いと感じます。本人や家族の悩みや苦しみに寄り添わない。聞こうとしない。最後まで診てくれない。誤診しているのではないか。そんな不満や辛さを抱えて、家族会に来られる方もおられます。医師はそんな家族の話に素直に耳を傾けるべきでしょう。家族の方は真剣に、我々医師に多くのことを教えてくれます。以前に、私のところに泣きながら電話をしてきた娘さんがいました。新聞に出た私の前頭側頭型認知症のチェックリストを見て、それまでうつ病と診断されていた父親をチェックしたら、どうも当てはまりそうだと。そこで担当の医師に相談し、医師がしぶしぶ脳の画像を撮ったら萎縮が見つかったそうです。そうしたらその医師から「私はうつ病が専門なので認知症の専門医を紹介する。」と言われたそうです。それまで4年位うつ病の治療をされ続けていたのです。この話はおかしいでしょう。うつ病が専門なら、なぜ4年も違うことに気が付かなかったのか。薬の反応とか治療の経緯をしっかりと見ていれば、おそらく分かったはずです。同じような話は他にもあります。―宮永先生が診断・治療において特に重要視されていることは何ですか―正確な診断もさることながら、本人の今後の日常生活の指導です。治療の順序としては、まずは本人の環境調整があり、次に日常生活・社会生活の支援、非薬物療法、薬物療法となります。すぐに薬物療法ということではありません。加えて医師の役割、本人の役割と努力、家族の役割と各々の役割分担を決めます。告知・説明の順序も、まずは本人に対しての、本人が理解できる範囲の説明、次に家族への説明となります。

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