ドクタージャーナル15号
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9DoctorsJournal自分の患者さんの病気に疑問を持ったことがすべての始まり この発見の原点は、自分が診ていた患者さんの病気に疑問を持った、ということに尽きると言えます。 例えば、「アルツハイマー病」の最初の症例報告を行ったドイツの精神科医アロイス・アルツハイマーも、自分が診ていた患者さんの病状に疑問を感じ、病理解剖で脳を見た結果、新しい病気として発見するわけです。1906年のことです。その後1910年に、彼の師匠のドイツ精神医学の大家エミール・クレペリンにより「アルツハイマー病」として広く知られることとなりました。患者さんの病気への疑問が大きな発見につながったという点では同じです。レビー小体型認知症の特徴 認知症という名称が付いているから、いわゆる認知症が出ていないと診断ができないというのは大きな間違いです。 アルツハイマー型認知症では物忘れから始まりますが、レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症と異なり、早期には認知機能障害、特に記憶障害は目立たないことが多い。認知症の症状は後から出てくることが多いのです。代わりに、幻視など様々なBPSDやパーキンソン症状、自律神経障害などが早期から見られることが多いのが特徴です。 また、抗精神病薬などに薬剤過敏性を示すことも特徴のひとつです。 さらには、レビー小体型認知症の患者さんの主訴は精神・神経症状に限りません。起立性低血圧、食後低血圧、頑固な便秘、頻尿、発汗などの自律神経障害が早期から出現しやすいことも特徴です。 ですから、レビー小体病は全身病とも言えます。認知症という病名に引きずられてしまう  レビー小体型認知症(DLB)という病名を付けたこと自体が問題といえます。私が提唱した、びまん性レビー小体病が最も適していると考えます。 認知症という病名が付いてしまったために、かえって病態が分かりづらく、認知症が出ていないと診断できないということになってしまっている。そのことで多くの医師が誤診してしまうのです。 専門医の間でもいまだに多く誤診されているのが現状です。認知症が出ないと診断できないと。 でもレビー小体型認知症は違う。認知症の症状が出る前から疑わなければならない病気なのです。 私が講演会や著書でも特に強調しているのはそこのところなのですが、それがなかなか浸透していません。周辺症状ではなくBPSD また、従来のアルツハイマー型認知症における、脳の変性疾患の中核症状に対して、二次的に現れる症状が周辺症状という考え方は、レビー小体型認知症では全く通用しません。 レビー小体型認知症の場合は、一般的に周辺症状と言われる症状の方が「中核」であるとも言えることから、「周辺」という表現は適当ではないと言えるでしょう。ですから、レビー小体型認知症では、周辺症状とは言わずにBPSD(注4)というべきなのです。―以前は、BPSDは「問題行動」とも呼ばれていましたが、この「問■レビー小体型認知症の最大の問題とは:小阪 憲司氏 医学博士 (認知症専門医)注1:レビー小体病( LBD:Lewy Body Disease )注2:びまん性レビー小体病( DLBD:Diffuse Lewy Body Disease )注3:レビー小体型認知症( DLB:Dementia with Lewy Body )注4:BPSD( 認知症の行動・心理状態:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia )

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