Doctors Journal Vol.8
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38医療機関向け融資審査の要所 Part.1 私が銀行員時代における融資審査の現場経験や、現在手がけている事業再生、資金調達コンサルでの医療機関向けの融資・事業再生コンサルの経験を基に、医療機関向けの「資金調達、融資審査の要所」をテーマに述べさせて頂きます。 本連載では特に新規開業を検討されている先生方に焦点を当てて、以下の4本のテーマを柱に話を進めさせて頂きますが、既に開業されているドクターの新たな資金調達に置けるポイントとしても参考にして頂ける内容であると思います。❶銀行にとって医療機関向け融資の難しさはどこにあるのか❷事業計画書の作成ポイント、 説明ポイント❸金融機関の付き合い方、選び方❹開業以降の資金調達の考え方 まず「銀行にとっての医療機関向けの融資の難しさはどこにあるのか」についてお話しします。銀行員全てが医療機関向け融資に精通しているのではない 銀行員に「医療機関」向けの融資というのは、あまりなじみがなく、経験値も少ないのが実情です。支店に配属されている融資係や営業担当の職員全てが医療融資に精通しているのではありません。 私は融資審査の本部経験もあったことから、多くの医療機関向けの融資案件に携わりましたが、この分野で数多くの経験を積んでいる行員はまず少ないと思っていただいて間違いないと思います。 民間の金融機関は、近年、医療機関向けの融資に向けて力を入れだしてきていますが、審査の担い手になっているのは本部の専門チームが行っているところが多いのが実情です。 まずは、多くの銀行員は医療機関向けの融資案件は難易度が高いと感じている。と理解しておいたほうがいいでしょう。医療機関向け融資のどこが難しいのか 一般的には医療機関は介護とともに、景気や為替の影響に左右されない安定した成長産業と言われております。医療機関の経営は、景気変動よりは診療報酬など国の政策に大きく左右されることから、今後の動向が読みやすいようで読みにくい業種とも言えます。また、一般企業においては「売掛金」に相当するのが診療報酬ですが、支払基金や国保からの入金であることから、貸倒れが少なく安全性が高い面があります。一方で、多くの設備投資が必要であり、売上全体に占めるドクター、看護師、スタッフの人件費率は相応に高く、利益率で考えるとそれほど高くないイメージがあります。 医療機関向けの融資を難しくさせているひとつの要因として国の制度改正が頻繁に起こっていることも挙げられます。ですから、支店の担当者レベルではなかなかノウハウが蓄積しにくく、本部の専門チームを立ち上げなければ対応できないのが実情なのです。◆ では、具体的に銀行員が難しいと感じている理由のポイントを挙げてみます。実はこのポイントを逆手にとることで、銀行員が難しいと感じる点を丁寧に説明していくことが融資への近道になるのです。①マーケティングの難しさ②専門性の理解③設備の妥当性④ドクター自身が数字に強いのか どうか⑤将来性の見通しが難しい①マーケティングの難しさ これは医療業に限ったことでは[連 載]❶

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