Doctors Journal Vol.8
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22遺伝子検査のこれまでの軌跡と今後の展望加速する科学・技術の進歩とどう向き合い享受すべきかを問われる時代へロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 (Roche Diagnostics K.K.) 〒105-0014 東京都港区芝2丁目6番1号 Tel: 03-5443-7041(代)【事業内容】体外診断薬・機器、研究用試薬・機器、診断薬・医薬品原料の輸入、製造および販売http://www.roche-diagnostics.jp/ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社メディカルマーケティング部 部長田澤 義明氏 今年2013年は、遺伝子検査を語る上で非常に重要な節目の年である。ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの2重らせん構造を提唱した1953年から60年目、カリー・マリスがDNA増幅法であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を発明した1983年から30年目、そしてヒト・ゲノムプロジェクトが終了した2003年からちょうど10年目である。これらの出来事は、遺伝子研究と遺伝子検査を語る際には無視できない画期的な科学的ブレークスルーであることは言うまでもない。そして、今年はこれからの遺伝子研究と遺伝子検査・医療にとってまた新たな展開があった。6月13日米国の連邦最高裁判所が、ミリアド社を訴えた裁判で「ヒトの遺伝子の特許性は認めない」と言う最終判決を出したのだ。節目は不思議と重なるものである。この最高裁判決のちょうど1ヶ月前に、米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんは、このミリアド社が独占的に実施している家族性乳がん・卵巣がん遺伝子(BRCA1/2)の検査を受け、その陽性結果から乳腺切除を行ったことを公表していた。彼女が受けた遺伝子検査とその結果に基づく判断・処置を医療と呼ぶべきか迷うところであるが、この60年の遺伝子研究と技術開発の進歩は、着実に新しい医療シーンを演出していることは事実だ。【日常診療における遺伝子検査の黎明期:感染症診断に未来の光を照らす】 古い記憶ですが、日本で保険適用された遺伝子検査が日常診療で使用され始めたのは1980年代の後半です。最初は性感染症の起因菌であるクラミジア・トラコマチスと淋菌、その後に結核菌や重症の肺炎の原因となる非定型抗酸菌(マイコバクテリューム アビューム・イントラセルラー・コンプレックス)でした。但し当時の遺伝子検査ではDNAプローブ法と言う測定方法が用いられており、検出感度があまり高くないため正確な診断には使えませんでした。 その後、冒頭でも紹介したDNAを試験管内で人工的に増幅するPCR法が1983年に発明され、遺伝子の研究分野で急速に広まったことを機にPCR法を利用した高感度な遺伝子検査の開発が行われるようになりました。日本で最初に保険適用となったPCR法を用いた遺伝子検査は、1992年に薬事承認されたメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のメチシリン耐性遺伝子(mecA)検査です。実はこの検査試薬は湧永製薬株式会社が日本の研究者と共同開発したもので、恐らく世界で最初のPCR法【プロフィール】1981年3月 日本獣医生命科学大学(旧日本獣医畜産大学)獣医学部卒業1981年4月 ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 (旧日本ロシュ株式会社・試薬部)入社1989年1月 PCR事業担当1998年4月 PCR事業部学術部長2004年4月 遺伝子診断事業部長2007年1月 臨床検査事業本部 マーケティング部門長2010年1月 臨床検査事業本部 製品・学術副部門長 兼 遺伝子検査部長2012年1月 臨床検査事業本部 ライフサイクル・マネージメント副部門長  兼 メディカル・マーケティング部長 現在に至る【主なキャリア】免疫学的検査の学術/マーケティング、遺伝子検査の製品開発・事業開発・学術/マーケティング【主な学会・業界活動】下記の学会・業界団体活動を通じて、主に遺伝子検査普及のための検査技術の適正化と標準化の啓蒙、遺伝子検査のガイドライン整備、臨床検査の診療報酬改定に関する要望や制度改革に関する業界提案のお手伝いを行っております。日本臨床検査振興協議会 医療政策委員会事務局NPO個人遺伝情報取扱協議会 理事日本遺伝子診療学会 学術情報委員会日本遺伝子診療学会遺伝子診断/遺伝子検査技術推進フォーラム委員会日本臨床検査自動化学会 遺伝子検査技術標準化委員会日本臨床検査標準化協議会 遺伝子検査標準化委員会日本臨床検査薬協会 医療保険委員会【主な資格】獣医師、衛生検査技師

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